散歩が好きだ。平日でも30-60分程度の距離なら歩くし、休日なら6時間くらい歩くこともある。
東京は歩くのにとても良い街だと思う。散歩は公共交通機関によるルーティングに縛られない。そのため、都市と都市の移り変わりがリニアで、ネットワーク感を肌身に感じられる。その都市らしさをランドマークと風俗をセットで感じられるのもよい。東京は小さい割に中心が多数ある稀有な特性があるので、変化が素早いのもおすすめできる点だ。
東京をおよそ歩いたと思う。ドライブも含めれば大体地理と景色を覚えただろう。
Netflixですずめの戸締りを配信していた。BGM代わりで流すつもりだったが、ついつい観てしまった。ストーリーのネタバレは今更いいだろうが、東京に降り立ったシーンから大みみずが落ちるシーンまでに差し込まれる東京を切り取ったカットが、やけにリアリティがあるように感じられた。御茶ノ水がかつて住んでいたところに近かったのもあっただろう。
これはすずめの戸締りのテーマとも言える記憶/震源の空白域と、昔歩いた地形の記憶思い出し装置としての役割がオーバーラップしたからかもしれない。寺田寅彦は『天災と国防』で、「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその激烈の度を増す」と述べた。この警句は、システム化された社会はカタストロフに脆弱であること、自然を畏れる気持ちを忘れてはならないこととを戒めるものだ。しかし、歩いた景色を念頭に改めて眼差してみると、むしろ危ういバランスの上で成立する都市の、華やかさとは違う儚い煌めきが感じられる。それは少しだけ美しくみえる。「新海誠を見ていると視力が良くなる気がする」と述べたかつての発言の解像度が上がったようにも思う。
作中の愛媛や神戸、福島にも見覚えある風景がいくつかあった。きっとそこも、いくつか歩けばこそ見える何かがあるんだろう。集団旅行だと難しいかもしれないが、原風景を歩いて見てまわりたい。