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統計検定1級に合格してからの2年間を振り返る

2017年11月の統計検定1級に合格して、約2年が経った。今回の記事では、その実生活上での影響について書いてみる。要は、統計検定って実際どうなん?という話。意外とその経過について書かれたものはなかったので。 

hawkingh.hateblo.jp

 

2年間の環境変化

まず初めに、当時と現状の環境の違いについて述べた方がスッキリするかと思う。

前回の記事でも書いたが、2017年時点で僕は一橋大学商学部の3年生だった。2019年現在は東京工業大学 環境・社会理工学院に進学し、情報社会論について研究している。情報社会論が理系的な要素を含む文系といった感じなので、毎回自己紹介に困るのはまた別の話。

縁があって、とある企業でデータ分析(後述するが、データサイエンティスト枠ではない)をしたり、友人のスタートアップの手伝いをしている。

就活もしてる。IT企業のビジネス職とコンサル見てます。

 

重要なのは、僕が文系大学から理系大学に鞍替えしたことだ。一橋と東工のカルチャーやシステムの違いについてもいつか書いてみたいが、まあそれは後で。

 

 

研究には役に立ってる、特に方法論の評価の際に でも2級の知識でいい

本題。

まず統計に関する知識が研究で役立たないことがありえない。大いに役立ってる。

具体的には、研究方法の評価で役立ってる。他人の研究報告にある量的研究の手法を聞いてる時に、これは問題があるなといったことが分かる。全部じゃない。あくまで統計が関わるところだけ。それでも不完全。

 

ちなみに、並の研究では統計検定1級相当の知識は使わない。唯一使ったのが金融関連の研究だった。であれば、研究のために統計検定を取りたいという人は、コスパ的にも2級くらいがあればちょうどいいかもしれない。計量経済学やMLをやる人は違うのかも知れないが。

ちなみに皮肉な話ですが、僕はいま質的研究をしている。後々使うかもしれないが、現状統計の知識は使ってない。

 

最近よく思うのは、こと研究という観点において、重要なのは統計の力よりもデータ収集やクレンジングの力だと思う(社会科学的な側面が強い分野だからかも知れない)。統計分析はEXCELSPSSかRを使えばいいので、正直あまり必要がない。もちろん手法の選択に役立つことは上述の通り。ちなみに、それに関しては以下の本が良かったです。

 

前処理大全[データ分析のためのSQL/R/Python実践テクニック]

前処理大全[データ分析のためのSQL/R/Python実践テクニック]

 

 

 

仕事では、基礎的なこと以外役立ってない

僕はマーケティング、ストラテジーとして企業に参与している。ので、データサイエンティストではない。たまにSQLPython, Rでゴリゴリやるくらいで、基本はスプレッドシートでも分析できるような仕事をしている。MLもやらない。だから、僕がデータサイエンティストという枠組みにいないことだけ差し引いて聞いてほしい。

 

まず率直に言うと、実際のビジネスで繊細な統計分析をしている時間は少ない。正確な分析を1個やるより、粗くても素早い分析を3個やる方がバリューを生みやすい(気がする)。まあ繊細な分析を短時間でやれるようになれ、という話なんだけど…。これは私感だが、難しいことやってる人ほど、シンプルなことを難しい理屈で説明してしまう癖があるオッカムの剃刀を心に持ちたい。まあ一方で、詳細な分析があって困ることもないので、1級相当の知識が無駄とは決して言えない。要は、組織が何を求めていて、自分がどこまで頑張るか、というバランスに尽きる。

 

あと、これは学生の身分で言うことではないが、量的な要素だけでビジネスをジャッジするのは極めて危険だと思う。データは事実であるが、真実ではない。ヘルシーなマクドナルド商品の話をご存知の方も多いと思う。問題は、いかに定量と定性を連関させるかで、定量分析を綿密にするだけでは限界がある気がしている

 

というわけで、僕は定量と定性の両方が出来る人になりたいので、あくまでビジネス職を希望している。ここについて、後に語る就職活動において、功罪が効いてくる。

 

 

数字偏重の人と会話するパスが出来た

これは自覚的になった方が良いのだが、社会科学に対する風当たりは近年増してきている。社会科学は詭弁である、とか役に立たないとか言われる。反論は可能だが、主題ではない。

 

とにかく、一部の人々はそのような考えを持っているということだ。これは事実なので、あーだこーだ言っても仕方がない(まあ流石に最近は、そういう人々に対して白眼視する傾向も出つつあるが)。言い方を選ばなければ、彼らは理系的なターム以外の共通言語を持たない。そういった意味で、社会科学を数理的に寄せながら語ることは有用だ。文系不要論に凝り固まった人の間隙を突けるのは、彼らの能力をしっかり引き出す意味でも大切だと思う。でもこれは統計関係ない気もする。

 

 

就活では役立ってないかも

これは僕が狭量なだけだと思う。統計検定1級を前面に出すと、分析だけやる仕事を斡旋されがちである。これは光栄なことである一方で、どうしても主体的にことに関われないジレンマに囚われることがある(これは好み)。そういうこともあって、僕は統計検定に受かっていることを、あまり公言しないようにしている。トウケイチョットワカルくらいには言ってる。

 

そういうわけで、個人的には役立っていない。だが、これは人によると思うので、個人の嗜好に合わせて適宜調整してください。もし、分析を生業にしたいのなら、1級と日々のアップデートは必須なんじゃないかな。とはいえ、1級の範囲ってけっこう狭いので、あれで万事大丈夫かと言われると、そうでもない気がする

 

 

コンタクトレンズ買えてる

これは本当に皆様のおかげなのですが、あの記事のおかげで毎月小さい収入が入っている。それで毎月コンタクトレンズ買っています。ありがとうございます。これが一番嬉しいかも。

 

 

暗号通貨取引はじめてる

お金の勉強が楽しかったので、こっちに統計の知識を活かせないかなと思いやってる。目下の趣味勉強。

 

 

おわりに代えて 規制や金融、政治、歴史についても勉強した方がいい

個人のことなので役に立つかどうかはわからないが、以上です。

 

まとめると、僕は個人的には、

  • 分析とか数理をゴリゴリにやりたい人:1級目指す
  • あくまでのビジネスとして統計を学びたい:2級目指す

くらいでちょうどいいんじゃないかと思っている。どうしても学ぶコストや優先順位ってあると思うので。「統計が流行ってるから」というのは否定はしないが、効率的ではない気もする。

 

ただし、統計を学ぶと、思いがけぬ副作用や機会(良いことも悪いことも含めて、でも良いことの方が多い)に出会えるので、そういうのを体験したい人は学ぶのも一興だと思う。でもこれは統計に限ることではないんじゃないかな。日々の勉強は大事ですね。

 

 

で。僕はデータを分析する力とビジネス力に加えて、世の動きを把握することが重要だと思う。データ分析をやっているとよく「ドメイン知識が重要」と言われる。これは正しい。一方で、そのドメイン知識の趨勢を占うのは、より大きな世の動きだと思う。いくらデカい企業でも、政府や規制には逆らえないしね。これについても加えて知ってれば、最強になれるのではないでしょうか。

 

そういうわけで、金と政治と規制と歴史について僕は勉強している。参考文献は末尾に。

 

金の動きを勉強すれば世界情勢が大枠把握できる。野村とか三菱とかBloombergのデイリーレポートをとりあえずは見てる。

政治を勉強すれば、経済的合理性とは異なる、政治的合理性のある世の動きについて納得することができる。これについては、イギリスの政治を勉強してる。イギリス議会をモデルに日本の議会が作られたので、参考になる部分が多い。ブレア政権と小泉政権の比較とか、現在のEU離脱とかも。

規制を勉強すれば、社会的弱者に対する考え方や、国が大切にしている態度みたいなものがわかる。たとえばAIに関する規制とか、欧州と米国、中国で全然違うのが面白い。これは論文を読んだり、サンスティーンの本を読んだりしている。

歴史を勉強すれば、過去の行動パターンがわかる。MLでさえ過去のデータから学ぶんだから、人間が過去を学ばなくていい道理がない。でも戦後史でいいと思う。山川の戦後史とか、政権史・経済史をパラパラ読んでる。

 

 

脱線が多い気がするが、僕は統計検定1級を持っているだけの人と、2級かもしれないが上記について学んでいる人だったら、後者の方の意見に信頼をおきたい。なぜならば、前者は数字的な合理性しか説明できないためである。後者は、経済的合理性、政治的合理性、社会的合理性といった、様々な観点から要素を説明できる。これは尊いことであるし、なかなか普通の人にはできないことなんじゃないか。

 

 

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